今回の米中貿易摩擦の誘因は「中国製造2025」と云われています。「中国製造2025」とは、中国政府が15年5月にハイテク製造業を促進するために提起した産業ビジョンです。
「中国製造2025」が提起されたことによって、情報化や製造工程自動化を目的とした製造業の設備投資が大幅に増加しました。さらに、対象分野の企業を誘致するための優遇措置が各地域で次々と告示されたことも、投資を加速させました。
しかし、短期間で設備投資が急増した結果、工業部門の設備稼働率は低下し始め、製造業の設備投資に調整色が強まっています。
さらに、18年5月に馬凱・副総理がリーダーを務める「国家製造強国建設領導小組」が、「中国製造2025」に対する地方政府の理解欠落を指摘し、地方の目に余る優遇政策に苦言を呈する意見書「地方落実《中国製造2025》存在的問題及建議」を公表しました。
今回の米中貿易摩擦は、過剰生産能力と政府支援後退に当惑し始めた製造業メーカーにとっては、一難去ってまた一難の状況と見ることができます。
しかし、「中国製造2025」は高所得国入りに不可欠な重要国策であり、製造業の競争力強化を目指す「中国製造2025」で提起したビジョンは、簡単には断念しないと考えられます。
米国からの強い圧力を受けながらも、過剰投資のさじ加減にメドが付けば、政府は製造業への投資援助を続行することになり、日本の工作機械メーカーにとってはプラスとなります。
何はともあれ、中国の産業ビジョン「中国製造2025」は、中国景気だけでなく、日本企業への影響も大きいだけにその行方を注視することが重要です。
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