6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が改定され、日本的経営形態と言われる親子上場に関心が寄せられております。この親子上場は米国ではほとんど見られず、日本独特の形態であることから、国際会計基準を採用する企業では既に解消に舵を切る企業も少なくありません。
では何が問題なのか。一つには親と子の関係ですから、循環取引などの不透明な会計処理の温床になりやすいということ。更には過半数を親会社が握っている訳ですから、親会社有利の経営判断をした場合、子会社のその他の少数株主の不利益に結びつく可能性があるということです。
この問題点について東証は、「一律に禁止することは適当でないものの、投資家はじめ多くの市場関係者にとっては必ずしも望ましい資本政策とは言い切れない。そのため、新規に上場を目指す子会社及びその親会社は、子会社上場の特性を十分に考慮しその方針を決定することが望ましい」と見解を示しております。
この文章を読んでいかにも役人らしいと思うのは筆者だけではないと思います。結局どっちつかずで玉虫色です。しかしながらこのコーポレートガバナンスの世界の大きな流れから、親子上場を維持する企業はこれまで以上に細かい説明責任を求められます。
特に時価総額で子会社が親会社を上回るケース、先日の日経新聞で取り上げておりましたが、キリンHDと協和キリン、宝HDとタカラバイオ、東映と東映アニメーションなどのように、時価総額が逆転している親子上場は物言う株主の標的になり、更に外資系ファンドのロング・ショート戦略の格好の対象になります。
また逆に、この流れにいち早く対応し、親子上場の解消に目途を付けたのが日立製作所です。株価は年初から5割も上昇しておりますが、取引時間、休日取引など、世界標準を取り入れ、アジアの金融ハブを目指す東京市場では、今後日立のような事例は益々拍車をかけて顕在化するものと思われます。
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