世界の大きな流れは「脱炭素」であります。地球温暖化に関するパリ協定で「2030年CO2排出26%削減」という約束が制定されましたが、このパリ協定に復帰したバイデン大統領は2兆ドルの予算を割いて、更に踏み込んだ大幅な削減を打ち出しております。
そこに導入を検討されておりますのが「国境炭素税」であり、モノやサービスの生産過程で温暖化ガスを多く排出する輸入品に対して課す税金です。
環境対策で一歩リードするEU内では既に各国で炭素税がかけられており、EU内での排出枠の取引システムも設けられておりますが、これだけだとEU域外との貿易では同じ化石燃料でも課税できないこととなり、EU側の不利が指摘されておりました。
そこでEU域内の税率との差額を関税として、域外からの輸入品に課税するものでありますが、現在スウェーデンの炭素税はCO2(二酸化炭素)排出量1トン当たり1万4000円、フランスが5500円、に対して米国は数百円にとどまることから、米国の国境炭素税導入は難しいと思われておりました。
しかしながらバイデン大統領も、環境規制の緩い国からの輸入に対しては事実上の関税を課すことを検討すると同時に、国内のサプライヤーには輸出の促進を目的として、温暖化対策の違いによる価格差を調整するための還付金を支払う計画を表明しており、パラダイムシフトとなりました。
先進国は、今まで安い労働力を求めて環境規制も緩い新興国に雇用を移しておりましたが、国境炭素税の導入でこうした国で作られた製品のコストは上昇するので、製造拠点や雇用を新興国に移す動機も薄れるという政治的面もあります。
いずれにしても、トランプ前大統領では考えられなかったことで、中国などの反対は目に見えておりますが、大きな予算を割いての米国の方向転換は、過去の経済障壁でも米国が動けば他も追随したように、国境炭素税が普及する見込みは大きいかと存じます。
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