高い木の上で作業を終えた植木職人が、軒先ほどの高さに下りてきました。それまで黙って見ていた親方が初めて声を上げました。「油断するな。心して降りよ」と。
皆様方もご存知の通り、徒然草の中にある「高名の木登り」と云う話です。
事故は大抵、もう大丈夫という油断で起きるから注意せよとの教訓です。これは今も昔も変わりません。
ある保険会社の調査によると、長時間の運転中に起きた交通事故の半数以上は、出発地から目的地までの8割以上を走り終えた後に発生しているそうです。運転で「あと少し」の緩みは大敵ですが、“油断”は更なる悲劇を生むことになります。
1997年当時の橋本内閣は、バブル崩壊の傷が癒えたと早とちりをし、「デフレ状況下」で消費増税(3%→5%)を行った結果、消費税収は年間で4兆円程度増えましたが、所得税と法人税は6.5兆円減って、治りかけのデフレを悪化させてしまいました。日経平均株価も2万2000円から約3年間で1万円近く下げたのです。
さて、来年4月に予定されている消費税引き上げの実施を巡り、1%ずつの段階的増税案や一時先送り論などの意見が出ています。しかし、日本の消費税増税は“国際公約”となっており、実施しないと日本国債の格下げが現実味を増し、暴落も起こり得ます。
株式市場の“願望”は、来年4月の消費税1%アップです。
「上げると云ったのだから、消費税は上げる。でも、景気動向などを考慮すると3%は無理なので、取りあえず1%とする。」そう結論を出せば、国際公約を守りながら、株価の下落も防げるのではと…。
市場の思惑通りに決着するかどうかは分かりませんが、経済は「生き物」であり、日本経済再生のためにもくれぐれも「油断するな。心して…」と、声をかけたい気分です。
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