英国の国民投票はユーロ圏にも厄介な不透明要因になっています。
EUは「ヒト、モノ、サービス、カネの移動は自由」を基本原則に「単一市場」の実現を目指してきました。
EU加盟国の国民は、域内ならどこでも自由に住んだり、職を求めたりすることができます、EU全体が、多くの経済活動であたかも一つの国のようになっています。EUの加盟国間の貿易には関税はかかりません。日本の北陸地方で取れた魚類を東京で売るのと同じです。
また、EU加盟28か国のうち22か国と、スイスなどEU域外の4か国の計26か国は「シェンゲン協定」に参加し、パスポート検査なしで国境を越えられます。
しかし、英国はこの協定に加わっていないため、EU加盟国から英国に入る際にはパスポートを示して身分を証明する必要があります。国境管理は国の大切な主権だと捉えているからです。EUの単一通貨ユーロ(99年)にも参加しませんでした。「通貨政策は国家主権の中核」との考え方が根強いことが背景にあります。
英国がEUの前身となる欧州共同体(EC)に加盟したのは73年になってからです。18世紀後半から産業革命が起き、かつては「世界の工場」と呼ばれていました。
しかし今や、世界を代表する金融街の一つ「シティー」を中心に金融業が産業の中核をなしています。EUは金融機関に対し、域内の監督当局から免許を取得すれば、他の加盟国でも業務を認める「シングルパスポート・ルール」を設けています。
そのため、日米などEU域外の国の金融機関の多くは「シティー」のあるロンドンに欧州の拠点を置き、他のEU加盟国に支店を出しています。日本企業は英国に1000社以上が進出しています。
キャメロン英首相は「我々は5億人の単一市場に参加しており、これは企業の成功に不可欠だ」と訴え、EUに残留する経済的な意義を強調しています。
今月10日の英国での世論調査では、離脱派が55%に上り、残留派の45%を大きく上回っております。英国で欧州連合(EU)への残留か離脱かを問う国民投票は6月23日に行われます。
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