生命の設計図であるDNAの一部をカットし、DNAを自在に編集する「ゲノム編集技術」が今年、大きな進歩を遂げそうです。
このゲノム編集技術が最初に登場したのが1996年ですが、その後改良が進んで、2012年に使い勝手のいい「クリスパー・キャス」が開発されると、研究は一気に広がり、昨年2016年には実際に新たな性質を持つ動物や作物が次々に生み出されました。
特に水産分野の進歩は著しいものがあります。例えば、マダイの受精卵のDNAを編集、筋肉が増えないようにミオスタチンというタンパク質の遺伝子を壊すことで、普通のマダイより体重を20%も増やすことに成功しました。
マグロでも研究が進んでいます。マグロは養殖中に光の刺激やほかのマグロに驚いて暴走し、壁や網にぶつかって死ぬことが多い魚ですが、ゲノムを編集することで、光を感じたり早く泳いだりするのに必要な複数の遺伝子を抑えることができ、養殖中の死が断然少なくなりました。
作物への応用も進んでいます。このゲノム編集で、乾燥した環境でも水分を失わずに発育する穀物の開発や受粉なしに実を付ける技術など多種多様にわたります。
さらに根治が難しい感染症の治療を目指す研究も始まっています。B型肝炎ウイルスやエイズのウイルスのDNAをゲノム編集技術でバラバラに切断し、無害化するものです。
B型肝炎やエイズのウイルスは、感染した細胞の核の中に自らのDNAを送り込んで潜伏するため、薬では核に残ったウイルスを完全に排除するのは難しいようで、ゲノム編集が一番いいと研究者の多くは思っているのです。
ただ生物を改変できる技術ゆえ、利用のあり方を巡って倫理的、社会的な議論が必要なのは言うまでもありません。
今年はゲノム編集関連銘柄が株式市場を賑わすことになるでしょう。
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