有事に発展するのではないかと懸念されていた米国のペロシ下院議長の台湾訪問はあっさり決行されました。この一議員であるペロシ下院議長は大統領不在の時には、副大統領の次に職務を遂行出来るナンバー3の人物で、それゆえ中国の反発は言うまでもありませんが、政権運営には利用しているようです。
中国はご存じの通り習近平国家主席の異例の三期目を狙っている中で、国内経済は最悪です。大きな問題は不動産と雇用です。資金詰まりから建設途上のマンションがあちらこちらに点在し、購入者は当然住宅ローンの支払いを拒否しており、バブル崩壊手前の印象は拭えません。
雇用面では、既に過酷な競争社会で生き抜くことを諦めた「寝そべり族」なるものの流行、それでもあえて競争社会を生き抜くために、あらゆる犠牲を払って優秀な大学に入学し卒業しても、現状では速やかに職に就けない学生がほとんどで、「大学卒業イコール失業」なる造語ができるほどで、これらを含め若者の失業率は20%に上ります。
しかも失業率を出しているのは都市部の一部ですから実態は更に酷く、当然不満はつのります。その捌け口を海外に持って行くのに国家の常套手段で、このペロシ下院議長の訪台はうってつけの事件であった訳です。
ペロシ議員は天安門事件のときも、北京を訪問し犠牲者を哀悼する騒動を起こしておりますし、香港問題のときは民主派の若手リーダージョシュア・ウォン氏らを米議会の公聴会に出席させて「香港人権民主主義法」の可決にも尽力した生粋の人権派であり、中国にとっては天敵です。
中国政府は国内向けにもしばらくは「ペロシ議員憎し」を喧伝し利用するでしょうが、とても有事発展するとは思えません。従って、相場的には既に織り込み済で、昨日の下げ過程でも強かった個別物色に変わりはありません。狼狽えることなかれ。
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